ニートはなぜ減らないか

2005/05/05 Thu 00:06

話題としては旬を過ぎているものの、予備軍のひとりとして、ニートについてはせる想いを書き留めておきたい。「なぜニートが増えるのか?」ではなく、「なぜニートは減らないのか?」という問いについて。

結論から言えば、働いたからといって「相対的に」得をするとは思えないからである。労働市場においては、25歳以上になるとすでに「中途」の枠に入る。しかし多くの、特に待遇がそれなりに整っている中途採用の募集要項には、ほぼ確実に「経験者」という条件が付けられている。この「経験者」とは、単に「(アルバイト等であれ)その業種に携わったことがある」という意味よりも、むしろ「正社員またはそれに準ずる立場で、その業種に3年程度携わったことがある」という意味が強い。そしてもちろん、ニートが「経験者」である可能性は低い。こうして「経験者」と「未経験者」の間にある溝は深まってゆき、アルバイトホッパーは年齢を重ねるごとに飛び石を失ってゆく。

無業者や引き籠もりに関して (ノビイズム)

で、上の記事のような言説をある程度前提としつつ、過程を端折る。ニートの側は好条件を求めるが、雇う側は好条件を与えるほどニートを評価しない。この点について問題となるのは労働市場における「未経験者」であって、その枠に括られるのであれば「フリーター」と「ニート」の間に差はない、と考える。逆に、「経験者」と評価されるほどの「フリーター」は対象外となる。

要するに、現状では、雇う側の言い分が「おまえらは既に労働市場での価値がなくなってるということを受け容れて、安い賃金で都合よく働かされることに我慢しろや」というようにしか聞こえないということについて。もちろん経営者たちの本音が85万人とも言われるニートの評価を押し下げたまま都合のよい単純労働者を確保して人件費を節約したいということなら、階層化が進む国内に労働意欲あふれる外国人労働者が入ってきて低所得者層のネイティブ日本人との対立が起こって極右が大量に議席を確保、とかこの途中までとかそんなところ。しかし、ニートをどうにかしようと本気で行動するのなら、雇う側が言い分を譲歩しない限り無理だろう。

だから、ニート側の意欲向上を計ることだけが「対策」であるなら方手落ちで、雇う側が要求を引き下げる、あるいはそういう姿勢を奨励する対策がなければ事は進んでいかない。経営者たちの本音が都合のいい労働力を求めているだけなら仕方のないことではあるが、たぶんニートは減らない。雇う側からすれば、ストレートで大学を卒業してきた新卒やら、現場で叩き上げられた経験者を優遇するのは当然で、ニートに対する評価は妥当だと考えているんだろうが、現状の雇用にニートの側が反応していないのならば問題は解決しない。学校法人やNPOが職業訓練を行っても、彼らは「経験者」にはならない。いま必要なのは「未経験者」を「経験者」に変えてゆく努力であり、これは現場の経営者が動かなければ始まらないことだと思う。

かといってニートの側も妥協をしないというのでは、やはり話が進まない。そこで、ニートへの働きかけを行うにしても、「働く意欲を促進する」と同時に、「現実的な目標を設定する」あるいは「妥協を促す」方策はどうしても必要だろう。ただし、現時点での間接的な示唆(雇う側が履歴書を見ただけで不採用にするとか)がニートに妥協を促すことに成功していないのだとすれば、このアプローチをどのように行うかは繊細に考えるべきで、ニートの面子も適度に保つような配慮をしてやってもいいんじゃないかと。つまり、ニートにも妥協は必要だが、片務的になってしまってはニートは動かないだろう、ということだ。雇う側がニートに対して兵糧攻めを仕掛けていると考えれば勝負は決まっているようなものだが、少なくともフェアだとは思いがたい。

「未経験者」のうち、ニートとフリーターで異なっているのは、そのアンフェアな状況を受け容れるかどうかという点だろう。ただし、フリーターのうちでも「サラリーマンにはなりたくない」「実現したい夢がある」などのような理由で積極的にフリーターを選んでいるのは少数派ではないかと思う。むしろ親に経済的に依存できないからとか、収入ゼロよりはまだマシだからとか、消極的理由でフリーターになっている場合が多いんじゃないだろうか。また、順調にキャリアを積み重ねた同期や年下の人間に対して引け目を感じてフリーターに留まっているという場合、内的な状態はニートとほぼ同じである。

ニートではない側からニートを話題にする人たちの中には「いいから働いてしまえ」という内容の意見もあって、これは、単に「間に合わなくなる前に、少しでもましな生活を確保しろ」というメッセージであると同時に、「仕事をしてしまえばより良い条件の仕事が転がっていることもあるので、ひとまず何でもいいから『経験者』になってしまえ」という意図も少なからず含まれている、ような気がする。実際、アルバイトや契約社員から「経験者」となってマシな方向へと進む道も、少なからずあるのだろうと思う。ただしニートたちが「仕事の実態」らしきものに触れるのは、せいぜいマスメディアを通じてでしかないので、ニートが「いいから働いてしまえ」という言葉だけを聞いた場合、後者のようなメッセージとしては伝わりにくいと思う。このあたりの疎通がうまくいっていないことも問題のひとつかもしれないが、かといって働くことを勧める側も「絶対に良い条件が現れる」とは言えないので、断言するのは難しいところだろう。

とはいえ「ニートなんてまったく理解できない」という層が雇用の実権を握る限り雇う側の妥協は出てこないのかなぁ、とニート内々定者としては思うのだった。あるいは、「少ない人員で捌ききれるギリギリの量の仕事を懸命にやりくりするのが精一杯で財布にそんな余裕はないよ」という状況も事実としてあるんだろうし。近い将来、「期限切れ」の労働力が低待遇で使われていく状況はどうしたって出てくるだろうなぁ。

ほぼ印象論だけどとりあえずこんなもんで……ニートの「雇用」に対する見方については、個人的に70年代後半生まれとして経験したバブル崩壊のイメージと関わりを見出せる気がするのだが、それはまた気が乗ったときに。

今日の参考ウェブ一覧

追記(5/8 04:12): 全体的に追補・修正しました。

Posted at 00:06 | Diary | 0 writebacks | edit
Tagged as: ,

writebacks

trackback URI

http://cu39.s57.xrea.com/diary/20050504_neet.trackback


SPAM ロボットを排除するため文字判読テストをお願いしています。画像に書いてある2つの単語を入力してください。単語の間には半角スペースを入れます。